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TOKYO-LONDON-NEWYORK

AKI INOMATA、古武家賢太郎、ブライアン・アルフレッド

2016年9月1日(木) - 10月8日(土)

 ラップトップとパスポートとわずかな荷物、あるいはiPhoneたったひとつをポケットに入れて飛行機に乗れば次の瞬間にはまったく別の座標の中に身をおいている自分を発見する身軽さ。ましてや物理的な移動さえ、今を生きる私たちの「ワープ」には必要ないのかもしれない。地図や時間の制限を超えた高度で細密なコミュニケーションの中では、文化圏や思想背景の壁を飛び超えた匿名性かつ普遍性をもった真実が、一瞬のうちに大きな数の人々の意思の共有を実現することがある。

 そう、今や「シェア(共有)」の感覚は、時差の壁さえ超えつつある。インスタグラムに毎秒投稿される膨大な数のイメージは、地球上に繰り広げられるシームレスな時間軸を物語っている。集められたイメージの中の価値観に多様性が見える一方、我々を乗せて物凄いスピードで回転し突っ走る地球という乗り物は、パーソナルな言語や欲望を大きな潮流に変換していく。私たちを巻き込む、大きなトレンドの渦の持つ磁場の強さと無関係に生きて行くことはもはや不可能にも見える。

 「東京—ロンドンーニューヨーク」と題された本展は東京=AKI INOMATA 、ロンドン=古武家賢太郎、ニューヨーク=ブライアン・アルフレッド、という大都市をホームグランドにするアーティストの作品を紹介することを目的としているものの、それはもしかしたら「ブエノスアイレスーテヘランーチェンマイ」でもあるかもしれないし、「ベオグラードーアデレイドーケープタウン」でもあったかもしれない。コンピュータをネットに繋ぐことで仮想世界のノマドであり続ける私たちは「大きな物語」を生きているようで、同時にごくパーソナルな「小さな物語」の主人公でもある。本展では「シェア(共有)」という概念、そして「アノニマス(匿名性)」、「ノイズ(雑音)」、さらに「コンフリクト(対立)」、「パーソナル(個人)」、「シンボル(象徴)」といったキーワードをもとに、複雑でフラジャイルな世界を行き来する現代の表現の行方を探っていきたいと思う。