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Himmel

小笠原美環

2023年10月5日(木) - 11月5日(日)

MAHO KUBOTA GALLERYは、10月5日から小笠原美環の個展を開催いたします。
本展では、タイトルが「Himmel(天空または天国を意味するドイツ語)」と名付けられた7点の連作を中心に新作が展示されます。

小笠原美環はこれまで、静かな室内の空間や風に揺れるカーテン、海辺の景色、深い森の風景など、私たちが日常的に目にするテーマを描いてきました。彼女の特徴的な技法は、青みがかったグレートーンの油絵具を使い、キャンバス上で滑らかに筆を走らせ、わずかな筆のタッチでミニマルに表現することです。キャンバスの広がりの中で限られた色彩を用いながら、白や紫など、ニュアンスのある色彩でアクセントをつけ、光の反射、揺らぎ、陰影などを捉える絵画を通じて、人間の知性や意識の流れといった形を持たない主題を表現しています。

昨年、作家は大きな喪失を経験し、それがきっかけで毎日空を見上げるようになったと言います。この展覧会では、空という無限な広がりに人々が何を求め、何を見出すのかに焦点を当てます。カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ、ウィリアム・ターナー、クロード・モネ、ゲルハルト・リヒターなど、絵画の巨匠たちが描いた空の傑作への敬意を胸に、小笠原美環自身もこの壮大なテーマに真摯に向き合うことを決意しました。完成された7点の大型キャンバス作品では、夜明けの空、雲の隙間から差し込む光、虹のかかった空、穏やかで静かな空、夕暮れ前の空など、異なる季節や時間帯の空が表現されており、これらを一組の作品として並べた光景は、まるでクラシック音楽の交響曲の複雑な旋律がもつような豊かで広がりのある世界を感じさせます。

小笠原美環は京都生まれ 。10代の頃に日本を離れてアメリカで暮らし、その後ドイツに定住しました。ハンブルク芸術大学でノベルト・シュワンコウスキーやヴェルナー・ブットナーに師事し、絵画を学びました。ハンブルクにスタジオを構え、グレーを基調としたモノトーンの油彩を用いて日常の日常の静謐な光景を表現しています。彼女の作品は具象絵画の形態を持ちつつ、意識の流れや哲学的な概念などを光や建築空間、ガラスの質感、自然のうつろいなどの仮の形に変換して表現されており、その独自性が高く評価されています。彼女の作品はポンピドゥーセンター(フランス)、ドイツ連邦共和国現代美術コレクション、アラリオ美術館(韓国)、Yu-Hsiu美術館(台湾)など、各国の美術館で収蔵されており、本年はYu-Hsiu美術館の個展に加え、恩師である故・ノベルト・シュワンコウスキーとの2人展、アルブレヒト・シェーファーとの対話形式の2人展がそれぞれキールとベルリンで開催されております。