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夏の終わりの日
ギデオン・ルービン
2023年4月7日(金) - 5月20日(土)
MAHO KUBOTA GALLERYは4月7日よりギデオン・ルービンの個展「The Last Day of Summer」を開催いたします。ルービンの日本では初めての個展となるこの展覧会では11点の新作ペインティングを展示いたします。
リネンのキャンバスに描かれた絵画の中で主題の上で光が停止している。ギデオン・ルービンの絵画はごく限られた絵画的言語で描かれているため鑑賞者は細部に惑わされることなくまずは絵画の全体を俯瞰してみるのだが、それでも目は無意識のうちに光あるところを探してしまう。視覚を陰影の襞に滑り込ませるタイミングはもう少し後にとっておこう、と思いながら、ルービンの絵画が放つ目の快楽への誘いに抗うことは到底できないはずだ。
過去にヴィンテージの写真を集めていたというルービンの絵に、その影響を見つけることは容易い。現在のことを描いたとしてもそこには、絵具がけして現在を描けない宿命 (ブラシを運ばせるたびに対象はすでに過去のこととなるから)をはっきりと指し示しているように感じられる。ミニマルな要素で描かれた人物像ーどこの国の何をしている人だかも、どんな人生を送ってきたかもわからない人の姿を前に人は自らの記憶を重ね合わせ、遠慮がちに感情を滑り込ませることができる。何かが不完全で、何かが失われている、シンプルで、純粋で若い世界。そこにはこの世の誰をも拒絶することのない普遍的な神話が静かに立ち上がっている。
ギデオン・ルービンの最新作は、タデウシュ・コンヴィツキ監督によるポーランド映画の代表作「夏の最後の日」からインスピレーションを得ている。この映画のスチールイメージを出発点として、ルービンは新たな作品群を生み出した。静かで瞑想的なシーンを絵具で再解釈し、モノクロ映画のシーンは絵画的なテクニカラーの世界に生まれ変わっている。
控えめで詩的な「The Last Day of Summer」は、ルービン自身の作品に見られるように、余計なディテールを編集して消し、必要なものだけを残し、曖昧でオープンエンドな結末を提示する。
「私たちは主人公の名前も、彼らの過去も知らない - 台詞はまばらで、筋書きは部分的にしか存在しない - が、彼らの身振り、眼差し、断片的な文章から、情報を想像することができる」(ロバート・ビルクホルツ「The Last Day of Summer – Tadeusz Konwicki」より引用)