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ジュリアン・オピー

2016年10月19日(水) - 12月3日(土)

MAHO KUBOTA GALLERYでは10月19日(水)よりジュリアン・オピーの個展を開催いたします。本展では新作のペインティングと映像作品14点を展示の予定です。

オピーの作品の魅力を一言で語るとすると、限りなく簡潔化されたビジュアルイメージに対しごく小さなディテールを加えることで生まれる、時に現実世界よりさらに現実に近い視覚体験の再現にあると言えるかもしれません。一見ランダムに、あるいは機械的に決められたアルゴリズムによって取捨選択されたようにみえるモチーフを組み上げていく表現様式は、実際にはアーティストの何十年にも及ぶ表現への実験的アプローチの数々から獲得された絶対無二のものと言えます。その過程は「複雑なものをシンプルにするという感じではなく、何もないところから表現に必要な最低限のものを少しずつ足していく」過程だとアーティストは言います。その固有のスタイルにより人々はオピーの作品を一目で見分けることができますし、オピーの手法を自分の心象風景の中で簡単に再現することすらできます。

本展に向けてオピーはギャラリースペースを壁面でしきり、迷路のような空間を創り出す予定です。迷路に迷い込む鑑賞者は、狭い空間を行き来するうちに壁のペインティングの姿を自分の動きにエコーさせ、次のコーナーにある映像作品を通して外の世界を疑似体験するような複合的な知覚のプロセスを体験することでしょう。止まっているものがあり、その傍らに動いているものがある。それは私たちの世界の当然ともいえるリアリティです。見る行為によって私たちは世界に命を与えています。アートとは視覚体験でありながら実は目の単体による体験ではなく、私たちの五感、あるいはそれを超える知覚がすべて総動員されることで初めて認識できる実に複雑で総合的な知覚の体験であることを、もっともシンプルな表現で伝えようとするジュリアン・オピーの新作展。そこには時代を超えて人々が表現し続けてきた古代エジプトの、江戸時代の浮世絵師の、それぞれの時代の表現者たちの瞬間瞬間の息遣いさえ感じらえることでしょう。時代や場所が変わってもアートとは個人と世界の関係性そのものであり、私たちをとりまくすべての環境とその断片的な体験の複合がアートを形作っていることを本展を通して感じていただければと願います。