次回の展示
まるで、花のような
武田鉄平
2024年11月15日(金) - 12月26日(木)
MAHO KUBOTA GALLERYでは、11月15日より武田鉄平の新作個展「まるで、花のような」を開催いたします。本展の開催にともない深澤直人氏の装丁による武田の作品集『FLOWERS』がユナイテッドヴァガボンズより刊行されます。
武田鉄平は1978年山形市生まれ。少年期からアーティストを志し、唯一無二の表現を追求するため、芸術全般への知見と考察を深めてきました。東京の美大を卒業後、就職を経て一度山形に帰郷。その後約10年間、作品を一切発表せず、絵画の本質と向き合い続けました。長く孤独な探求の末に辿り着いた「描くことを描く」というコンセプトは、武田がこだわり続けた「絵画」というメディアに留まりながら、絵画の本質を根底から揺さぶる試みでもありました。シンプルなアプローチでありながら既存の絵画表現の境界を跳び超える可能性を示す、このオリジナルな手法の獲得により武田は「何らかの主題を絵に描く」ペインターではなく、絵画というメディアの成り立ちそのものに挑むコンセプチュアルアーティストとしての道を歩み始めました。
「描くことを描く」という実践のもと制作された10点の絵画が初めて世に発表されたのは、2016年に山形の多目的スペースで開催された武田の初個展でした。真っ白な背景に人の顔を抽象的に描いたかのように見える作品群のもつ説明し難い引力は鑑賞者に強いインパクトを与え、その反響は2019年にユナイテッドヴァガボンズから出版された初の作品集である「Paintings of Painting」、そして同時期に当ギャラリーで開催された個展へと繋がっていきました。
武田の「ポートレイト」作品が鑑賞者の心を捉える理由は、その絵画が鑑賞の時間軸の中で、多層的な感覚を呼び覚ます点にあります。鑑賞者は、作品を遠くから眺めた際に感じる強烈な存在感や、増幅された絵具の艶やかさ、流麗な線の生命感を目にする一方で、近づいて見た時には緻密な写実表現の中に見られる粒子の輝きのひとつひとつに圧倒されます。制作手法は一貫しており、まず複数のオリジナルの絵を描き、その中から一枚を選び、大きな支持体に再現していくというプロセスを採っています。絵画をそのまま写し取るのではなく、絵画のもつ一瞬の質感や筆の動きの軌跡を描き出す。まさに「描くことを描く」というコンセプトを体現しています。武田は「僕は空想を描いている訳ではない。現実に存在し、自分が美しいと思えるものを、描いている。自分の手で作り出した新たな現実に美を見い出し、それを描いているのだ*1」と書いています。
本展で発表される新作は、展覧会のタイトル通り「まるで、花のような」一連の絵画です。抽象的に描かれた人の顔のような作品群と同様に、武田が描いている本質は固定された主題ではなく、絵画を描く行為と、その結果生まれる絵画の瞬間のアウラです。武田は「これ以外に、描くべきものを何も見いだせなかった。この手法を取る事で、現代アートが過去に捨て去ってきた描く事、それを美しいと感じる事、それをそのまま作品として提示する事ができる*2」と述べています。もはや絵画そのものの在り方を覆すほどの絵画を描かなければ、芸術作品として成立しない。現代アートが提示した命題に対し、武田の絵画はひとつの凛然とした解答を提示しており、そのラディカルな本質や芸術的葛藤の過程を感じさせない、優美で典雅な作品として鑑賞者を魅了することでしょう。
*1、*2 共に、武田鉄平作品集『Flowers』収録の、武田鉄平によるテキスト「反絵画への反絵画」より引用。
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展覧会関連イベント
対談:保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター)× 武田鉄平
日時:2024年12月15日(日)15:00~
会場:MAHO KUBOTA GALLERY
滋賀県立美術館ディレクターの保坂健二朗氏をお招きし、武田鉄平との対談形式で絵画やアートについてお話しいただきます。
*事前申込・定員制となっております。詳細はギャラリーのHPおよびSNSにて後日発表いたします。
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武田鉄平作品集「FLOWERS」
ユナイテッドヴァガボンズより個展開催に併せて刊行
デザイン:深澤直人/NAOTO FUKASAWA DESIGN
寄稿:ブライアン・ディロン、宮本武典、武田鉄平
仕様:A4変形/ハードカバー上製本/96ページ
定価:5,500円(税込)
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武田鉄平作品集『FLOWERS』の限定特装版をMAHO KUBOTA GALLERYとドーバー ストリート マーケット銀座の2ヶ所限定で販売いたします。深澤直人デザインによるオレンジとブラックの2種類のボックス入り、各作品シート付き。
限定400部、定価:22,000円(税込)を予定。