次回の展示

壳,仅如蝉翼一般

冷广敏(レン・ガンミン)

2023年2月10日(金) - 3月18日(土)

MAHO KUBOTA GALLERYでは中国の気鋭の若手ペインター、冷广敏(レン・ガンミン)の個展を開催いたします。当ギャラリーでは5年ぶり、2回目の個展となる本展のタイトルは「壳, 仅如蝉翼一般」、日本語に訳すると「殻、蝉の羽のごとく」という意味になります。

一見ごくシンプルな印象を与えるレンのペインティングは複雑な成り立ちをしています。麻のキャンバスをベースに絵具や紙を重ね、マスキングテープでシャープな輪郭線を描いたかと思うとその輪郭を微細に剥がし、ナイフで削り取り、一方でエアブラシを使いボリュームのある曲面を描いてゆきます。いくつもの絵画的レイヤーが一つの画面の中で複眼的に関係を結びそれぞれに呼応しています。最近のメインストリームである表現主義的なアプローチでナラティブを浮かび上がらせる具象絵画を見慣れた目には、シャープで整理されたイメージにかすかな揺らぎと偶発性を忍ばせるレンの表現はプロセスの実験と思索に満ち、刺激的に映ります。

アーティストキャリアのごく初期からレンは『切る』という行為を絵画のテーマとして掲げてきました。絵画のルールにおいてはすべての対象は外殻、あるいは表皮に覆われており、外殻を描くことで表面的にはその対象を描くことができるとされています。レンは対象にナイフを入れて中身を理解し、介入することで対象とそれをとりまく世界、さらにはそれらと自らのパワーバランスやエネルギーの流れを捉える実践に絵画の突破口を見つけ、その手法を発展させてきました。

レンの言葉を借りると「本展は、表現のあり方、『殻』を描いたもの」であるとされます。
レンの示す『殻』とは、単なるモノの外殻を超え、表現者の実践の中で干渉され、解体され、新しい価値と結び付けられるアーティスト自身の表現の実験場を示しているのではないでしょうか。クールな計画性のもとに対象への思索に満ちた探求を推し進め絵画の可能性を切り開き続ける若手ペインター、レン・ガンミン。本展ではさらなる進化を遂げたレンの新作絵画を中心に11点の作品が展示されます。

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レン・ガンミン ステートメント

『切る』というのは私の(制作において)長年のテーマで、『殻』というのは、切る対象の外殻と理解すればよいでしょう。『切る』という行為は、解剖学のように対象を開いて中を見るという探求の形であったり、植物の剪定のように対象の形に介入して変化させるという形であったり、無目的の破壊のように感情表現の形であったりする。異なるオブジェクトは異なる思索の方向を表し、『切る』という行為と組み合わさることで、異なる感情を浸透させます。

私の最初の展覧会のタイトルは「SEE THE APPEARANCE」です。そこで、必ずしも中身の方が価値が高いわけではなく、外見も浅薄なものとは限らない、ということを展覧会を通して伝えたかったです。外見には客観性があり、無数の可能性が生まれますが、毎回の探求において、感情に左右されることなく、最初の外見から出発したいと考えています。

本展は、表現のあり方、『殻』を描いたものです。モノを前にして、ナイフで本来の秩序を壊すとき、その瞬間の私たちの感情はどのようなものでしょうか。オリジナルのオーダーを壊すと、新しいオーダーが生まれるのでしょうか? 殻の中には何が入っているのでしょう、宝物なのか、それとも空っぽなのか。空っぽなら、これもある種の得(収穫)になりうるのでしょうか?