過去の展示

ジュリアン・オピー

2022年10月21日(金) - 11月26日(土)

MAHO KUBOTA GALLERY では10月21日よりジュリアン・オピー の個展を開催いたします。
ダンスを主題とした5点の映像作品と8点のペインティングによる新作展となります。

文明が生まれる前の先史時代、人類は言語の獲得より早く、ダンスをコミュニケーションの手段とした可能性があると言われています。体を揺らしリズムを刻むダンスという身体表現は、個が共同体に結びつくためのごく自然な動きでした。単純なリズム動作を繰り返すことによって生まれる一体感と高揚感は現代においても多くの人々が経験したことのあるダンスの魅力と言えるのではないでしょうか。

ジュリアン・オピー はこれまでも「歩く人」「ポーズをとる人」「走る人」「ポールダンサー」など、現代社会における人間のふるまいを主題として時代のシーンを切り取る鮮やかな作品を生み出してきました。それらの作品は現代を生きる私たちの姿を映し出している一方で、同時にこれまで人類が営んできた本質的で普遍的な行為とも結びついており、太古の昔から人々が絵画や彫刻作品として表現してきた「人間の営み」、すなわち「人が生きるということ」を私たちの時代において手に入る材料によって提示するという試みでもありました。

オピー が過去に主題としたポールダンサーのダンスは独特の目的と様式をもった完成されたダンスである一方、今回オピー がペインティングとLEDディスプレイによる映像作品として表現する若い男女のダンサーの姿は、新しいルールによって展開されてゆく発展途上のダンスのようにも見えます。これらのダンスはTikTokで人気の「シャッフル」という群舞であり、通常はかなり早めのスピードで皆が同じステップを繰り返し、ダンサー同士のシンクロ感を生み出してゆくものだそうです。LEDのディスプレイによって二次元的に展開されるダンスの動きはしばらく見つめていると、まさに生きている人の動きそのもののように見えてきます。オピーの過去の作品と同様に、その動きの細部にモデル一人一人の個性だけでなく、態度や生き様、個々の気配が見てとれることにより、彼らの姿は突如として私たちが日々暮らすこの地球の、現在を代表する生き生きとした群像となり、時代を映し出すランドスケープともなっているのです。