過去の展示

NEW WORLD

ブライアン・アルフレッド

2021年10月21日(木) - 11月20日(土)

MAHO KUBOTA GALLERY では10月21日よりニューヨークを拠点に制作するブライアン・アルフレッドの個展「NEW WORLD」を開催いたします。

本展の開催にあたってアーティストは「NEW WORLD」という象徴的なタイトルを掲げました。展示される28点のペインティングとコラージュ作品、ならびに1点のアニメーション映像作品はいずれもパンデミック下で制作された新作です。比較的小さいサイズの作品は世界がコロナ渦に席巻されはじめたごく初期の段階、隔離状態にあったアーティストの自宅で制作され、大きなキャンバスペインティングは私たちが新しいルールのもとでの生活に徐々に適応してゆく過程において、アーティストが制作の場を自宅からスタジオへと回復し描かれた作品です。

アルフレッドはこれまでも世界が抱える問題や危機、社会の現実を現代的で詩的な表現手法を用いて描いてきました。今回制作されたペインティングを過去の作品群と比較すると、創作の過程で辿ったであろうアーティスト自身の揺れ動く感情が、よりパーソナルかつ現実的な質感をもって伝わってきます。中でも特に印象的な「Street Lights」と題された152 x 127cmのペインティングでは、人の気配のない都市の大通りの真ん中で、誰に伝えるでもなく信号機が発する強いメッセージ=「止まれ」の光景が描かれています。それはその先の遠景に世界が続いているにもかかわらず、突然立ち止まることを余儀なくされた私たちの状況を象徴しているかのようです。活気を失ってただ静かにそこにあるだけの都市の風景と並行して海辺の波濤や野の花や、旅の記憶への憧憬も描かれ、人の営みが止まった時間軸の中でも刻々と変化し続ける敢然とした自然の強さの前に無力感と同時に希望を見出そうとする心の動きが感じられます。

これらの作品についてアーティスト本人は「この時期、そして今回の展覧会のために制作したイメージは、すっかり変容してしまった 私たちの現実の経験を色濃く反映している。それは、私が今『New World』として捉える状況の中でアートを制作する最初のステップとなった。」と言及しています。本展にて展示される作品はすべて、アーティスト本人がパンデミック下の世界から踏み出すための最初の一歩を指し示すものとして制作し、不確かな明日の先に希求するより良き未来への道筋を表すものとなります。