富田直樹

東京

2019年10月18日(金) - 2019年11月22日(金)

《Tokyo (Metropolitan Expressway)》2019年、キャンバスに油彩、72.7 x 60.6 x 2cm
《Tokyo (National Stadium)》2019年、キャンバスに油彩、91 x 91 x 2cm
《Tokyo(Shibuya)》2019年、キャンバスに油彩、60.6 x 60.6 x 2cm

MAHO KUBOTA GALLERY では10月18日より富田直樹の個展「東京」を開催いたします。
東京の今を捉えた新作油絵を展示いたします。

厚く塗り重ねられた油彩で実直に描かれた風景画。描かれた光景は、空きテナントのファサードや、不動産屋に案内された何も置かれていない部屋、街中のコインパーキングや、都会の夜景。しかし、そこに人の姿はありません。あるのは「何かが生まれる前の光景」を見つめるまなざしの気配だけです。

富田直樹の描く郊外や都会の風景画の中にあるうっすらとした寂寥感は、そこに人の姿がないことによるものでしょうか。一方、その絵画によって引き起こされる感覚に、喪失や諦観といったネガティブな感情は全く見受けられません。むしろ何かが一つの役目を終え、次の新しい姿に生まれ変わる前の清しい瞬間やかすかな煌きが捉えられているように感じられます。

MAHO KUBOTA GALLERYでは3年ぶりとなるこの個展で富田は、2020年を一つのメルクマールとし刻々と移り変わる東京の座標を描こうと決め、数ヶ月に及ぶ制作に取り組んできました。「東京の今を描く」という大変ストレートなアプローチではありますが、そこに至るまでの富田の制作態度には、昨年数ヶ月を過ごした熊本県津奈木町のアーティストレジデンス・プログラムでの滞在制作の経験が深く関わっているように見られます。都市近郊の街で育ち京都の大学で絵画を学び、アーティストとなっても東京郊外の引力の中で作品を向き合ってきた富田にとって、巨大な都市圏の渦から逃れ、それまでの実践を一度リセットすることのできた津奈木町での4ヶ月はまさに彼の作品の主題とも言える「何かが新しい何かになる前のニュートラルな状態」を意識する時間だったのではないでしょうか。海に面し山野に囲まれた津奈木町の滞在中に描かれ、つなぎ美術館での個展で展示されたペインティングの数々には一人の絵描きとして純粋にキャンバスに向き合った富田の決意のようなものが見て取れます。

本展の新作でも同様に油絵具を丹念に塗り重ねられて表現されるいくつもの風景が展開されています。そこにある風景は東京で生活する人なら誰もが見覚えのある、一つの共同体が共有する記号的な光景でもあります。池袋、六本木、神宮外苑、秋葉原、渋谷、新宿歌舞伎町、中目黒。一つ一つの場所に個人の記憶や思念があるにせよ、富田のキャンバスの上でそれは共同体の持つ感覚として描かれており、個人のセンティメントを切り離したニュートラルな風景として提示されます。しかし、再びその絵に深く視線を向けるとき、絵の中に人は自分の姿を探すのではないでしょうか。これまで風景絵画の中に全く人物を描きこまなかった富田ですが、今回は一部の作品にかすかな雑踏が描かれています。それは偽りのない真実の東京の姿であり、今を生きる私たちの姿でもあります。

富田直樹  Naoki Tomita
1983年茨城県生まれ。2012年京都造形芸術大学美術工芸学科卒業。2015年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画専攻修了。厚塗りの油絵具を重ねる手法で描いた大都市近郊の風景や空きテナントのファサード、職業をもたないフリーターの若者達を描いたペインティングが注目を集める。個展に「さざなみ」(つなぎ美術館、熊本、2018年)「Project N 60 富田直樹」(東京オペラシティアートギャラリー、2015年)などがある。2015年現代芸術振興財団アートアワードにて審査員特別賞を受賞。